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『蜻蛉文脚付杯』

蜻蛉文脚付杯

素敵な色合いでしょうか。やがて死に逝くとんぼのかすかな羽ばたきと儚げな時間をそのまま大理石の中にとじ込めてしまったようでしょう。
このガラスの器、また光の具合で様々な物語を語りかけてきてくれます。あたたかな色合いと落ち着いた雰囲気で僕を包み込んでくれる大切な友人のようです。


なんて、こんなものがぼくの部屋に一つあったらいいのに。という幻想です。
これ、既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、19世紀末のフランスを中心として造られたガラス芸術品、つまりアール・ヌーヴォーのガラス。
その中でも、アールヌーヴォーを代表する芸術家であるフランスのエミール・ガレ晩年の傑作です。
「重層の透明ガラスの各層の間に大理石模様、蜻蛉の形のガラス箔を挟み込み、さらに乳白のガラスを被せた多層被せガラスの杯を大理石を模した脚台の上にのせた杯。」と紹介されている作品です。エミール・ガレは、1904年に白血病でなくなりますが、この作品は彼が亡くなった年に制作されています。それを知ると一匹のとんぼに、自分の姿を投影したかのように思われてきます。

彼は、幼い頃から文学、哲学、植物学、科学に優れた才能を発揮したそうです。詩には深く通じ、デッサンや風景画の授業も受け、また専門的に植物学を学んでいます。学校を卒業後、父の会社のアトリエで陶器の絵付けなどを手伝いはじめ、やがてガラス製造へと興味を向けていきます。

アール・ヌーヴォーのガラスは、その背景の素地に大きな特徴があるといわれます。ヴェネツィアガラスやボヘミアガラスなど、ガレ以前は、透明なガラスをつかうのが一般的でした。しかし、その常識をひっくり返したのがガレでした。彼の作り出すガラスの器は、どれも複雑な色合いと、独特の質感を持っています。こうした素地を生み出すには驚くほど高度な技術が必要とされます。ガラスは、ケイセキと呼ばれる鉱物を原料として、およそ1400度の熱で溶かし、形をつくっていきます。本来透明なガラスに色をつけるためには、さまざまな金属や鉱物をガラスといっしょに溶かし込んでいく必要があります。そして、形を整えたらゆっくりとさましていきます。長い時間をかけて。こうして彼は、それまで誰も見たことのないガラスの器を生み出しました。

なんとなく、彼の作品を思い出した夜でした。夏休み前にBunkamuraいってこよーっと。
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『光の魔術師―エミール・ガレ (鈴木 潔)』
2006/07/22 23:01|ひとTB:0CM:0
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